長岡亮介のよもやま話225「Weihnachtsoratoriumを聴いて」

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 ここでいろいろなお話をしていると、ともすると非常に混迷を深める国際情勢のことなどもあり、どうしても暗い話題になってしまうのですけれど、今日は、しばらくは自分自身を元気づけるというよりも、自分自身をもう少し高尚な存在に高めたいと思い、ちょっと前向きの話をしたいと思います。

 このようなお話をしようと思ったのも、YouTubeでWeihnachts-Oratorium、英語にすればChristmas Oratorioっていうことですね。クリスマスオラトリオとか、復活祭オラトリオあるいは被昇天オラトリオムと、いろいろとおめでたい聖なるお祝いのためのバッハが作曲した素晴らしいオラトリオシリーズがありますけれども、我が国ではどっちかっていうとそういうオラトリオよりも、むしろ涙なしには聞くことのできない受難曲の方が、演奏会などで取り上げられることが多いですよね。確かに受難曲も素晴らしいんですけど、今日久しぶりにたまたまYouTube

でWeihnachts-Oratoriumがかかっていたので、それを聞かせてもらいました。もうあれやこれやいろいろと批判の多いYouTubeでありますけれども、やはりこのような高品質のものを手軽に楽しむことができるというのは、何とも嬉しいことですね。広告がうるさいというような問題はありますけれども、幸いなことにこういう作品に対してはあまり広告が入らないという良さもあります。広告の中には、それを見ているだけで不愉快になるというほどえげつないものが多いわけですけれど、こういう立派な作品には広告もあまり入らない。Google社の見識をちょっと見る思いもいたします。そのくらいGoogleのことを考えているんだったら、無料で広告がカットされる会員になった方がいいんじゃないかとも思うんですけど、一方であまりにもえげつない広告を収益のもとにしているGoogle社のやり方を見ていると、そしてその中で自分にもその収益のおこぼれがやってくると思ってる人々のことを思うと、やはりこのGoogleビジネスというものに対して賛成する気分にはならず、広告だけをきれいにカットしてくれるというソフトウェアを入手して聞くというふうに私は今動いています。

 クリスマスオラトリオのような、美しい歌曲と言っていいんでしょうか、要するにオラトリオ、聖書の物語を音楽にしたもの、合唱とソロの音楽そしてもちろんオーケストラ、これが奏でる美しい音楽っていうのは、私達から見れば、もうこれは18世紀の話でありますから、産業革命も起きてない時代の人々がこのような曲にどのような思いを馳せていたかということを想像しながら、私達は豊かな社会に生きているような気がしていますけれど、本当は豊かでも何でもない。ある意味では強制的にコマーシャルを見せられて、強制的に物欲を刺激されるそういうような囚人のような生活をしているような気もします。でも、そのような囚人のような毎日を送る私達に、バッハからの贈り物が届く。そしてその贈り物を届けるために、多くの人々が心を一つにして協力している。これは人間の素晴らしいことですね。私達は、本当に新しい発見、新発明こそが大切だというふうに思いがちなんですが、演奏あるいは合唱は、昔々偉大な作曲家が作った楽譜に基づく再現でありますから、単なる繰り返しに過ぎない。科学的には新しいものは何もない。そういうふうに言ってしまいがちですが、このえらく古い約300年も前の世界に私達が思いをはせながら、その300年間の間に、私達はどういう歴史を刻んできたんだろうか、私達は人類をより幸せな方向に向けて変革することに対して成功しているんだろうか、それとも失敗しているんだろうかということについて、その偉大な発明家あるいは発見者というバッハの作品を繰り返し演奏するということを通じて、そのバッハの魅力を再発見している。そういう人々の喜びに、私達も加わろうではありませんか。

 これからしばらくの間、私はできるだけ前向きに考えることができることを積極的にやっていきたい。そして、バッハがこのようなオラトリオに込めた気持ち、あるいはバッハの時代の人々が有名な教会の大きな聖歌隊でこういう演奏をしてきた時代のこと。そして、その時代からずっと経っても、その伝統を深く尊敬して守り続けようとしていること。そしてその伝統の中で、新しい魅力を人々が再発見しているということの不思議。それに私達も少しでも参加することができたらいいな、とそう思っています。

コメント

  1. Leo.橋本 より:

    こんばんわ。
    この曲を聴きながら幾何の問題を考えていたら、補助線が引けました。
    2ヶ月間考えても見えなかった補助線が、突然と姿を現したのです。
    良い音楽の紹介をありがとうございます。

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